Updated : Sep 21, 2019 in Top

YaseinuStory

パプアニューギニアの村でみかけるそのやせ犬達は、

病気で毛がちぎれ、ハゲハゲのガリガリで、

卑屈なまなざしがやたらと印象的だった。

決して人間に媚びることをせず、与えられることをせず、

人目を避けるように人間と共生しているその犬達には、

先進国諸国で豊かに暮らしている「飼い犬」のような生温かさはなく、

かといって自ら獲物を捕らえる野犬のような鋭さもない。

単にボロボロのボロぞうきんのようなヤセ犬だった。

ところがそいつらが、1年に数回だけ

村で特別な儀式とか祭礼とかがあるときに、

人間達といっしょに野豚狩りにでかける。

人間の仕掛けた罠に獲物の野豚を追い込むのが

ヤセ犬達の仕事だという。

村人達は特別な儀礼のときだけ豚を食べる。

その食べカスがヤセ犬達にとっては唯一のご馳走であるらしい。

僕は走る姿すらも想像できないそのヤセ犬達が、

野豚を追っかけるなんてとても無理だろうと思っていた。

しかし、僕はそこでものすごいものを見てしまった。

そのヤセ犬達が野豚を見つけた瞬間、すごい!

全身にエネルギーが満ち溢れ、変身してしまった。

そしてまるで猛獣のように猛然と、

一斉に、すごい勢いで野豚を追い始めた。

その姿があまりにもすごくて、僕の体は思わず震え始めた。

僕の脊髄に何かが走った。

感動で涙が出るほど「美しい」と思った・・・。

「野豚を追うヤセ犬」より   藤浩志